2009/09/05

青春18きっぷに見る価格戦略(後編)

(前編)からの続きです。

青春18きっぷ(1日分に換算すると2300円)を利用する人がいたとして、もし会社が利益を出すために必要な距離を単純に考えてみます。

本州のJR会社(JR東・東海・西)であれば、営業キロで2,300円を上回るのが、

<幹線のキロ数(地方交通線のキロ数)>

141-160km(129-146km):2520円

私の住む北海道であれば、<同様にJR北海道>

121-140km(111-128km):2,420円

である。


これは大体、東京だと、南房総や、小淵沢あたり、北海道だと札幌から東室蘭あたりまでです。

単純に考えると、顧客が上の最低キロ数より乗車区間を短くするとJR各社には多少の利益がでると考えられます。
(5回全部使い切ることができないことからくる利益も考えられます。)


しかし、このきっぷの利用者は、主に長距離移動をすることが多いこと、また購入者も大抵は一日2,300円以上使うことが多いと思われるので、かなり薄利な商品なのでは、と考えられます。

ましてやJR6社間で売り上げを分配するのでしょうから、利益はあまり見込めないと考える方が適切なのではないでしょうか。

しかし、なぜこのきっぷが一役買っているのか。

一つは、乗車頻度の少ないローカル線の乗車率を高めるといった部分でしょう。

もう一つは、私自身、マーケティングを学んだことはないのですが、顧客層のセグメントを切っていると考えられるのではないでしょうか。

前編でも述べましたが、鉄道のきっぷの場合、付加価値を料金券(特急券やグリーン・寝台券など)で付与しています。

青春18きっぷはそれと異なり、低価格でより多くの回数の利用が図られるような体系です。

<下図参照>


青春18きっぷは、1回分の利用料金を低価格に抑えることで、鉄道利用のターゲットも多くしています。
さらに低価格で観光の要素を含めるといったメリットをこのきっぷは発揮します。

利益を出すのは付加価値だけではなく、こういった顧客数を増やせる努力をすることも大切です。


北海道では高速バスや自家用車といった交通手段が強く、ましてや、飛行機を使い観光に来る人が多い。

鉄道の旅の魅力を感じてもらうこと、バスや飛行機にない、列車の魅力というものを直接アピールできる青春18きっぷは、競合他社との争いに勝っていくための顧客獲得のためにかかるコストを低減してくれていると考えられるのではないでしょうか。

複数人数できっぷを利用可能という点も含め、このきっぷの価格はそれに見合った価値があるのではと考えた今日でした。

0 件のコメント:

コメントを投稿