2011/2/26(土)一人の車掌が最後の乗務を迎えた。
函館の佐々木伸一車掌だ。
操車係や、貨物列車の車掌を経て函館の車掌に。
車掌と言えば事故がないよう業務するのが第一ですが、当然接客も大切なお仕事です。
佐々木車掌は常日頃、車内で丁寧な対応を心がけるなど、接客の時間もとても大切にしてきたようです。
特に、お客様に感動を与えられるような車内放送に定評があり、ファンも多かったそう。一部では“放送の神様”とも呼ばれていたようです。
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車内放送に関して言及しておきますが、必ずしも伝えすぎることがよし、というわけではありません。
人々の多様な価値観に配慮し、肉声放送自体も簡素化。
仕事に集中したいビジネスマン、ゆっくり休みたいお客様など、静かな車内を求めるお客様がいるのも事実です。
近年、列車も自動放送化が進み、肉声での放送の機会は減ってきています。
しかし、特急列車、ましてや寝台特急であれば、旅情ある放送をしていただけたら、という気持ちにもなります。
旅のお客様にとってみれば、その列車に乗る、という行為自体が楽しみなのです。
トワイライトエクスプレスでは、まず最初にいい日旅立ちが流れます。
<いい日旅立ち>
まず、スタートのこの音楽が気持ちを奮い立たせます。
そして佐々木車掌の肉声です。
列車の音でかき消されているところや、容量オーバーで切れてしまったところもありますが…。
<車内放送>
『皆様の旅と思い出を胸に刻み、サーモンレッドのヘッドマークとダークグリーンの車体を2月の風に包ませながら、夢とロマンを乗せ、雪解けの音がかすかに聞こえ始めましたが、春まだ遠い北の都札幌からトワイライトエクスプレスの終着駅、水の都大阪へ向け、ただいま、札幌駅4番ホームをゆっくりと流れております。』
『北海道の大自然、青函トンネル、日本海の雄大なパノラマを観賞しながら大阪まで12時間47分、1500kmあまり、夢のブルートレイントワイライトエクスプレスでのご旅行をどうぞごゆっくりお楽しみください。』
色々とご考えになって話されている様子が伺えます。
長いなーと思う人もいるかもしれませんが、寝台車でこの放送を聞くからこそ輝きを増し、旅情を掻き立てます。
佐々木車掌は他にも、樽前山、胆振日高の牧場、内浦湾、駒ケ岳、大沼公園、サラキ岬、青函トンネルなど、観光案内のレパートリーも豊富で、お客様を楽しませる引き出しをいくつも披露してくれておりました。
発車時にお世話になった後輩たちのお見送り、食堂車のスタッフさんや途中駅でお世話になった人からプレゼントを贈ってもらっていたりと佐々木車掌がとても愛されていたことが伝わってきました。
トワイライトエクスプレスは、蟹田駅で停車し、JR北海道の車掌から、JR西日本の車掌へ引き継ぎ。
佐々木車掌からの最後の放送。
『私事ではございますが、本日のこの列車を持ちまして最終乗務となります。試運転も含めまして、1989年のトワイライトエクスプレス運行開始以来、21年間この素敵な列車に携われたことを誇りに思います。また、最後の乗務を札幌から皆様とご一緒できましたことを大変嬉しく思っております。この先もこの列車が皆様から愛され、夢を乗せて走り続けることを心から願っております。 』
この放送で食堂車のスタッフや一緒に乗務していた車掌は涙、お客さまからも拍手の中、最終乗務を終えました。
最後までお客様に対する感謝、寝台列車にかける想い、一緒に歩んできた仲間への気持ちが伝わってきました。
こういった車内放送も紙一重のところはあるかと思いますが、シーンに合わせ、臨機応変に話すこと、声色、表情、身のこなしなど様々な要素が絡みあわせているからこそ、佐々木車掌は多くの方に祝福されているのでしょう。
お客様が満足し、楽しい時間を過ごせるように。そして、いかにしてその想いを伝えていくか。
佐々木車掌に、よき職人の姿を感じました。
やわらかく、うまく言葉を紡いで北海道の旅情に華を添えてきた語りべに感謝です。
長年お疲れ様でした。
感動的だね~国内旅行したくなりますな!
返信削除こういう風に日々プロフェショナルに頑張っている人が世の中にはたくさんいるだろうから、彼・彼女らの話をもっと聞きたいよね。
地域で頑張る皆さんを応援したいよね!
返信削除素晴らしい放送ですね!感動しました。ベテランならではの流れるような語り口がいいですね。
返信削除コメントありがとうございます。
返信削除HP拝見しました。台湾にいらっしゃるのですね!
台湾は昨年行きまして、移動で新幹線にも乗りました。